近年、社会の変化が急速に進み、子どもたちを取り巻く環境はますます複雑化しています。
家庭の形が多様化し、地域のつながりが希薄になる中で、
子どもたちが安心して成長できる場の確保が課題となっています。
こうした現状を受け、
埼玉県では「埼玉県教育振興基本計画」に基づき、
「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和のとれた成長をめざし、
一人一人の子どもが生きる力を身につけられるよう、教育の充実に取り組んでいます。
その実現には、学校だけでなく、地域や福祉、民間事業所など多様な機関が連携し、
子どもの育ちを支えることが求められています。
生きる力とは何か
「生きる力」とは、知識や技能だけでなく、
自ら課題を見つけ、考え、行動し、よりよく生きるための力です。
学力という枠を超え、人生を切り拓く力ともいえます。
この力は、教室の中の学びだけで身につくものではなく、
家庭や地域、福祉的な支援の中での経験によっても育まれます。
学校教育の補完として、私たち民間の教育・福祉の現場ができることは、
まさにこの「生きる力」を実体験を通して育てていくことにあります。
地域とつながる学びの場として
たとえば、放課後等デイサービスや地域学習支援の場では、学習の支援だけでなく、
子どもたちが人と関わり、協力し、時に衝突しながら解決していく「社会性」を学ぶ機会を提供しています。
これは、埼玉県教育振興計画で掲げる「多様な学びを支える地域共生社会の実現」にも通じるものです。
子どもたちは、支援員や友だちとの関わりの中で、
「ありがとう」や「ごめんね」といった言葉を自然に交わしながら、
他者を思いやる力、相手を尊重する心を少しずつ身につけていきます。
こうした経験の積み重ねこそが、豊かな人間力の基礎となります。
児童福祉法改正が示す教育と福祉の連携
また、教育と福祉の連携は、児童福祉法の改正によってますます重要になっています。
令和6年(2024年)の児童福祉法改正では、教育・福祉・医療の各分野が連携し、
子どもの最善の利益を保障する体制の構築が求められました。
特に発達障害や特別な配慮を必要とする子どもたちに対しては、
「合理的配慮」と「個別最適な学び」を両立させる支援が重要視されています。
これは学校だけで完結するものではなく、地域の福祉機関や専門職、家庭が一体となって支えることが不可欠です。
私たちの果たすべき役割
その意味で、私たちのような教育・福祉の中間的な立場の機関は、
学校と家庭をつなぐ架け橋のような役割を担っています。
学校では見えにくい子どもの小さなつまずきや不安、家庭では気づきにくい学びの遅れや人間関係の悩みを、
日々の関わりの中で拾い上げ、関係機関と共有していくことが求められます。
私たちが子どもと向き合う時間は、単に「勉強を教える時間」ではなく、
「子どもの心を受け止める時間」でもあります。子どもの表情や言葉、
ちょっとした変化を感じ取ることが、豊かな学びへの第一歩となるのです。
確かな学びと豊かな学びの両立
「確かな学び」とは、基礎的・基本的な知識や技能の定着を指しますが、
それは単なる暗記や反復練習だけでは育ちません。
子どもが自ら考え、「なぜ?」と問いを立て、試行錯誤しながら理解していく過程が大切です。
私たちは、子どもの「わかった!」という瞬間を見逃さず、
その喜びを共に味わうことで、学びの楽しさを実感させていく必要があります。
学ぶことに対する肯定的な感情が、次の挑戦への原動力となるからです。
一方で、「豊かな学び」は、学力の枠を超えた人間的成長を意味します。
体験活動や芸術、スポーツ、地域交流などを通して、
子どもが自分の感性や個性を発揮できる場を設けることが重要です。
たとえば、絵を描くことが得意な子どもが作品を通して自分を表現したり、
友だちと協力して作品を完成させたりする中で、「自分らしさ」に誇りをもてるようになります。
そこには、「他者とともに生きる力」や「自己肯定感」が自然に育まれていきます。
一人ひとりの可能性を伸ばす支援
埼玉県教育振興計画でも、「多様な個性を尊重し、一人ひとりの可能性を最大限に伸ばす教育」を目標に掲げています。
つまり、画一的な学びではなく、それぞれの子どもが自分のペースで成長できる社会をめざしているのです。
私たちが担うべき役割は、その理念を現場で具体化することです。
子どもの得意を見つけ、認め、伸ばしていく支援を重ねることで、
子どもは自信をもち、学びに向かう意欲を高めていきます。
安心感が学びを支える
さらに、福祉的視点から見ると、子どもの「安心感」は学びの前提条件です。
居場所があること、受け入れられていると感じることが、心の安定につながります。
学校での緊張や失敗をリセットできる「第2の居場所」として、
私たちが温かく迎えることが、子どもの再挑戦を支える土台となります。
失敗してもやり直せる環境の中でこそ、子どもは「生きる力」を実感的に学んでいくのです。
豊かな人間力の育成に向けて
また、私たちが目指すべき「豊かな人間力」とは、他者を思いやる心、
責任感、協調性、そして自分を大切にする力を含みます。
これらは、知識や技能のように数値化できるものではありません。
しかし、人としての土台となる部分であり、将来どんな道に進んでも必要とされる力です。
大人が子どもの良さを認め、失敗を責めず、
挑戦を応援する姿勢を持つことが、人間力を育てる最大の支援です。
未来を生きる子どもたちへのまなざし
今後の社会では、AIやデジタル技術の発展により、知識そのものの価値は変化していくでしょう。
その中で求められるのは、「どう生きるか」「どう人と関わるか」という人間としての在り方です。
埼玉県教育振興計画が掲げる「未来を切り拓く力」とは、まさに人間らしく生きる力のことです。
私たちは、教育と福祉の両輪で子どもを支える実践を通して、
子どもたちが自分の可能性を信じ、希望をもって歩んでいける社会を共につくっていきたいと考えています。
共に育つ社会をめざして
子どもの成長を支えるのは、学校だけでも家庭だけでもありません。
地域社会の中で、一人の子どもをみんなで育てていく。
その輪の中に、私たちも一員として参加していくことが大切です。
教育と福祉の連携を深めながら、確かな学びと豊かな学びを両立させ、生きる力と人間力をはぐくむ。
その取り組みこそが、子どもたちの未来を支える礎となるのです。
教育立県としての決意
埼玉県は「教育立県」を掲げ、すべての子どもが夢をもち、
自らの力で未来を拓ける県づくりを目指しています。
その実現のためには、教育関係者だけでなく、
地域の一人ひとりが教育の担い手となり、学びを支える意識を共有することが欠かせません。
私たち民間の教育・福祉の場もまた、その一翼を担う存在として、
子どもの笑顔と成長を支える活動をこれからも続けてまいります。
教育立県・埼玉の理念のもと、すべての子どもたちが豊かに学び、
生きる力を育む社会の実現に向けて、共に歩みを進めていきたいと考えています。