仲間と学ぶ姿に見える優しさ
今日、ある教室での一場面がとても印象に残りました。
ある子どもたちは、友達と一緒に相談しながら学習に取り組んでいました。
その中で、一人の子が他の子より早く理解できていたようでしたが、
その子は決して「わかった」と強調することなく、
仲間の気づきを引き出すように関わっていました。
「〇〇ちゃん、いい考えだね」「〇〇くん、よく気づいたね」
「○○くんに賛成だよ」「みんなで解けたね」と、
周囲の仲間に対して前向きな言葉を惜しみなくかけていたのです。
大人の声掛けを見て、子どもは育つ
こうした子どもの姿には、大人の丁寧な声掛けの積み重ねが映し出されています。
子どもは、大人の何気ない言葉や、
ちょっとしたやりとりをしっかりと聞き取っており、心の中に吸収しています。
「うまくできたね」「工夫して考えたんだね」「友達のことを大切にしてるね」といった
肯定的な声掛けは、子どもの中に「自分も誰かを認めたい」という思いを芽生えさせ、やがて行動に現れてくるのです。
教育とは「共に育つ」こと
教育の語源には、「共に育つ」「引き出す」といった意味があります。
教育とは、大人が一方的に子どもを育てるのではなく、
子どもと大人が関わり合い、共に育ち合う「共育(きょういく)」であるべきです。
今回のように、子ども同士が学び合い、高め合う姿には、信頼と安心感が土台にあります。
そして、その土台を支えてきたのが、日頃からの大人の関わりなのです。
学力だけではなく人間力を
自己中心的な振る舞いではなく、仲間と共に学ぶ喜びを共有できる子どもは、
「確かな人間力」が育まれている証です。
人間力とは、他者を思いやる心、感情を適切に伝える力、協調性、協働、自己制御力など、
非認知能力を含んだ多面的な力です。
学力の高さだけでは、社会で幸せに生き抜くことは難しく、
むしろこうした人間力こそが、将来にわたって子どもを支える力となります。
安心感の中で育まれる共感力
子どもが仲間の意見を認め合い、共に考える力を育むには、
日常の積み重ねが不可欠です。
大人が、子どもの小さな「できた」「気づいた」「工夫した」に敏感になり、
丁寧に受け止めていくことで、子どもは「自分は受け入れられている」という安心感を持つことができます。
この安心感が、他者にも優しく接しようとする気持ちの土台となっていきます。
結果ではなく、過程に注目を
私たちはつい、正解や結果に目を向けがちですが、子どもがどんな表情で学び、
誰とどのように関わったのかという過程にも注目したいものです。
すぐに答えにたどり着けなくても、仲間と対話しながら悩み、考え、学ぶ中にこそ深い学びがあります。
そしてその中に、協調性や思考力、社会性といった人間力の育成も含まれているのです。
対話から生まれる成長の瞬間
ある子が「自分はこう思うけど、どうかな?」と問いかけ、
それに対し別の子が「うーん、ちょっと違うかもしれない。
でも、ここまでは合ってると思う」と返す場面がありました。
そのやり取りを通して、お互いの考えを摺り合わせ、新たな気づきが生まれます。
ここには単なる知識の交換ではなく、認め合いながら学ぶ力が見られます。
子どもの姿から学ぶこと
私たち大人も、こうした子どもの姿から学ぶことがあります。
つい「早く」「効率よく」と急ぎがちな大人社会の中で、子どもたちはじっくりと丁寧に、
他者と関わり合いながら確かな力を育てているのです。
時間をかけてでも自分の言葉で伝えようとする姿勢、
真剣に話を聞き合う態度に、心を打たれることも多くあります。
大人の役目は「考える力」を育てること
大人の役割は「正しい答え」へ導くことではなく、「自分で考える力」を育てることです。
そしてそのためには、「認めること」「信じること」「見守ること」が大切です。
「失敗しても大丈夫だよ」「やり直してみよう」「その考え、面白いね」といった温かい言葉は、
子どもに挑戦する力を与え、仲間と共に成長していく意欲を育てます。
教育立県としての取り組み
教育立県を掲げる埼玉県では、学力だけでなく心の成長や人間力の育成にも力を入れています。
子ども一人一人が、自己の可能性を信じ、
他者と協力しながら社会で力強く生きていけるような教育のあり方が求められています。
今、目の前にいる子どもたちの中に未来があります。
その未来を形作るのは、大人の丁寧な関わりにかかっているのです。
「みんなで解けたね」に込められた成長の証
「みんなで解けたね」という言葉は、単なる学習の成果ではありません。
それは、他者と共に喜びを分かち合う心、仲間を認め合う姿勢、
そして共に歩んでいこうとする意欲の表れです。
こうした言葉が自然と出てくる子どもたちは、間違いなく確かな人間力を身につけつつあります。
子どもは大人の鏡である
私たちが常に心に留めたいのは、「子どもは大人の鏡である」ということです。
どんな言葉をかけ、どんな態度を見せるか。
それが、子どもの内面に反映され、やがて行動として表れてきます。
共に学び、共に育つ「共育」の精神を大切にしながら、
これからも子どもたちの育ちを温かく支えてまいりましょう。