対話を大切に

子どもと接する中で、「どのような言葉をかければよいのか」と悩む場面は少なくありません。

子どもは大人の言葉に敏感であり、何気ない一言が大きな影響を与えることがあります。

特に成長期の子どもにとって、大人からの声掛けは、自分の価値を知り、他者との関係性を築き、

社会の中で自分らしく生きるための大切な糧となります。

だからこそ、肯定的な声掛けを意識することは、子どもの可能性を広げるために欠かせない工夫の一つなのです。

 

 

「できたこと」に目を向ける。 

 

肯定的な声掛けを行う第一歩は、子どもが「できなかったこと」ではなく、

「できたこと」に目を向ける姿勢を持つことです。

たとえば、「テストで100点をとった」といった成果に目が行きがちですが、

小さな進歩や努力も丁寧に見つけて認めてあげることが重要です。

たとえテストの点数が低くても、「最後まで自分で解こうとしていたね」

「漢字は前より丁寧に書けているね」と声をかけることで、

子どもは「自分は認められている」という実感を得られます。

 

これは、結果よりも過程を大切にするという視点にもつながります。

失敗やうまくいかないことを経験した子どもにとって、

「どうせダメだ」「怒られる」といった気持ちが芽生えることは自然なことです。

その時、「最後までがんばったね」「ここまで一人でできたのはすごいよ」といった言葉をもらうことで、

失敗からも学びを得て、次へのステップに気持ちを切り替えることができるようになります。

 

子どもの存在そのものを認める

肯定的な声掛けは、行動や結果だけでなく、子どもの存在そのものを受け入れることからも始まります。

「いてくれてうれしいよ」「一緒にいると楽しいね」といった言葉は、子どもに安心感を与えます。

人は、無条件に自分を受け入れてくれる存在がいることで、心の土台がしっかりと築かれます。

その土台の上に、「できること」や「挑戦したいこと」が芽生えていくのです。

 

また、子どもが落ち込んでいるときこそ、こうした声掛けが大きな力になります。

「そんなことで落ち込んでいるの?」ではなく、

「つらかったね」「悔しいよね」と、まず気持ちに寄り添い、存在を肯定する言葉を伝えましょう。

気持ちを受け止めてもらえたと感じたとき、

子どもは自分の感情をコントロールしやすくなり、立ち直る力も強まっていきます。

 

言い換えの工夫をする

つい否定的な言葉を口にしてしまうことは誰にでもあります。

「なんでそんなこともできないの」「いい加減にしなさい」といった言葉は、

子どもを否定し、自己評価を下げてしまう可能性があります。

しかし、同じ内容でも言い方を変えるだけで、子どもの受け取り方は大きく変わります。

 

たとえば、「まだできていないね。でも、ここまでできたのはすごいよ」といったように、

「まだ」という言葉を使えば、今後の成長の余地を残しつつ前向きなメッセージを伝えられます。

また、「こうするともっとよくなるよ」とアドバイスを添えることで、

子どもは次の目標に向けて前進しようという気持ちになります。

 

否定語を使いそうになったら、一度心の中で立ち止まり、別の表現に言い換える習慣を持つことが大切です。

否定から入ると子どもは心を閉ざしますが、肯定から始まると、

子どもは話を聞こうという姿勢になりやすくなるのです。

 

子どもとの対話を大切にする

声掛けは一方的なものではなく、双方向のコミュニケーションの中でこそ意味を持ちます。

子どもと対話する際は、まず「聴く姿勢」を持ちましょう。

子どもが話したいと思える雰囲気をつくることが先決です。

話を最後まで聞き、「なるほど」「そうなんだ」とうなずきながら受け止めるだけで、

子どもは「自分の話は大切にされている」と感じることができます。

 

そして、その上での声掛けには、共感と励ましの言葉を添えてみましょう。

「よく考えたね」「その気持ちわかるよ」「チャレンジしてみたんだね」といった言葉は、

子どもの心に深く届きます。

対話を通じて、「認められている」「大事にされている」という感覚を育むことが、子どもの心を支える大きな土台となるのです。

 

子どもが自分を肯定できるようになるために

私たち大人が肯定的に声掛けをするのは、子どもに自己肯定感を育てるためでもあります。

自己肯定感は、「自分はこれでいいんだ」「自分には価値がある」と思える力です。

この感覚が育つと、困難に直面しても立ち向かう力や、人との関係を築く力が強まります。

そのためには、大人が「あなたはあなたでいい」「そのままで大丈夫だよ」と、繰り返し伝えていくことが大切です。

日々の中で、小さな成功や変化を見つけてほめたり、

一緒に喜んだりすることが、子どもにとってかけがえのない経験となります。

 

また、大人自身が肯定的な言葉を使い、自分の感情や失敗を素直に伝える姿も、

子どもにとって学びになります。

「今日はちょっと失敗しちゃったけど、またがんばるよ」と話す大人の姿は、

失敗を受け入れ、前向きに生きる力の見本となるのです。

 

子どもの心は、日々の関わりの中で少しずつ育っていきます。

だからこそ、大人の声掛けひとつひとつが大きな意味を持ちます。

肯定的な言葉は、子どもを変える魔法のような力を持っているのです。

どんな時も、子どもに寄り添い、信じ、励ます言葉を届けること。

それが、子どもたちの未来を明るく照らす第一歩となることでしょう。