「習慣」とは一緒につくるもの

私たちが子どもと向き合うとき、

つい「こうあるべきだ」「普通はこうするものだ」といった、大人側の価値観を押しつけてしまうことがあります。

それは決して悪意からではなく、子どもが将来困らないように、

社会性を身につけてほしいという愛情から生まれるものです。

しかし、正しい習慣づけを行いたいと思うならば、

まず必要なのは「大人のものさしで考えすぎない」という姿勢です。

子どもの発達段階や個性に合わせたアプローチこそが、真に持続可能な習慣形成につながるのです。

 

たとえば、「朝は早く起きて身支度を整える」という行動一つを取っても、

すぐにできる子どももいれば、時間がかかってしまう子もいます。

大人の感覚からすれば「時間通りに動くのは当たり前」「言われたことはすぐにやるべき」と感じるかもしれません。

しかし、子どもにはそれぞれの生活リズム、身体の成熟度、環境への適応のスピードがあります。

ですから、できない子どもを叱る前に、「なぜできないのか」「どうすればできるようになるのか」といった

“気づき”のサポートをすることが大切です。

ここで重要になるのが、「気づき、感じて、考える」というプロセスです。

習慣とは、ただ形として定着させるだけでは意味がありません。

「やらされている」という感覚では、表面的な行動はできても、それを続ける意義を理解できません。

逆に、自分で気づき、意味を感じ取り、「なぜこれが大事なのか」と自分なりに納得して習慣化していくことができれば、

自然と行動が安定し、習慣が根づいていきます。

 

そのためには、子どもの行動をじっくり観察し、問いかけや共感的な言葉を通して考える時間を与えることが必要です。

「どうして今日は起きるのがつらかったのかな?」「昨日寝るのが遅かったからかな?」といった声かけは、

子どもにとって自分の行動を振り返るきっかけになります。

そして、「明日はもう少し早く寝てみようかな?」といった前向きな工夫を自分で考えるようになれば、それは大きな一歩です。

 

また、「正しい習慣に戻す」という言葉には、過去にはできていたのに、

最近できなくなっている状態が含まれていることが多いでしょう。

こうしたときも、大人は「前はできてたのに、どうして?」と責めるよりも、

「最近、何か気になっていることある?」と気持ちに寄り添う姿勢が大切です。

子どもが習慣を崩してしまうときには、

心や体の疲れ、環境の変化、人間関係の悩みなど、何らかの背景があることが多いのです。

 

ときには、いったん立ち止まり、一緒に生活リズムを見直してみることも効果的です。

時間割を書き出したり、1日の流れを図にしたりすることで、

自分の生活を客観視できるようになります。

大人が「決めたことを守りなさい」と言うよりも、

子ども自身が「この時間にこれをやれば楽になる」と納得して進められるようになれば、

それは自律的な習慣づけの始まりです。

 

さらに、正しい習慣づけを支えるうえで見逃してはいけないのが「環境の力」です。

たとえば、勉強に集中できない子どもに対して、「集中しなさい」と言う前に、

机の上が散らかっていないか、スマホやゲームが目の前にないかなど、

集中しにくい環境になっていないかを点検することが必要です。

また、朝の支度が遅れてしまう子どもには、洋服を前日に準備しておく、

朝のチェックリストを壁に貼っておくなど、視覚的・物理的に習慣を支える工夫も有効です。

 

習慣づけには「スモールステップ」が基本です。

一度に全部を変えようとせず、まずは1つの行動に集中し、できたらしっかりと認めてあげること。

「今日は自分から歯みがきできたね」「昨日より5分早く起きられたね」といった具体的な振り返りは、

子どもにとって大きな励みになります。

成果を評価するのではなく、プロセスや工夫を認めていくことで、習慣化への意欲が育っていきます。

 

そして何よりも大切なのは、大人自身が「お手本」となることです。

子どもは言葉よりも、行動から学びます。

大人が時間を守ること、感情の切り替えができること、物事に前向きに取り組む姿勢を見せていれば、

子どもは自然とその背中から多くを感じ取ります。

大人が乱れた生活をしていながら子どもにだけ習慣づけを求めても、説得力に欠けてしまうのです。

 

子どもと関わる上で、「いつまでにこれができるように」という目標を立てることは大切ですが、

同時に「その子のペース」に寄り添う柔軟さも忘れてはなりません。

大人のものさしで測るのではなく、その子の心の動きに目を向け、

「気づき、感じて、考える」ことを大切にしながら、習慣をともに育んでいく。

そうした姿勢が、正しい習慣づけへの確かな一歩になるのではないでしょうか。

 

習慣とは「一緒につくるもの」です。

大人の役割は、強制するのではなく、支え、伴走し、必要なときにそっと手を差し伸べること。

そうした温かな関わりが、子どもの中に「やってみよう」「できた!」という自己肯定感を芽生えさせ、

習慣の定着につながっていきます。小さな積み重ねが、やがて大きな力となり、

子どもたちの「生きる力」を育むのです。