子どもが何かに挑戦する時、あるいは気持ちが沈んでいる時、
大人の一言が大きな影響を与えることがあります。
日々の声かけの中で、子どもの表情がパッと明るくなったり、目の輝きが変わったりすることがあります。
それは、子どもの心に届く「言葉」があったからです。
子どもたちは、日々さまざまな感情を抱えて生活しています。
学校生活の中で、学園での生活の中で、友だちとの関係、先生とのやりとり、テストや課題、部活動など、
多くのことに心を使っています。
そんな中で、ふとした瞬間に「もうだめだ」「どうせできない」「やりたくない」と思ってしまうこともあるでしょう。
そんなとき、大人の言葉が支えになり、再び前を向くきっかけとなるのです。
今回は、子どもがやる気を出すきっかけとなる「5つの言葉」について考えてみたいと思います。
これらの言葉は、決して特別なものではありません。
しかし、真心を込めて伝えることで、
子どもにとっては「自分を信じてくれる存在がいる」「わかってくれる人がいる」という
安心感や自信につながります。
1.「大丈夫だよ」
この言葉には、大人の信頼と安心感が詰まっています。
子どもが失敗したとき、ミスをして落ち込んでいるとき、
不安そうにしているときに「大丈夫だよ」と声をかけられると、その子の心は少しずつほどけていきます。
もちろん、「大丈夫」と言われても現実的には解決していない問題もあるでしょう。
しかし、この言葉は「あなたには乗り越えられる力があるよ」「私はあなたの味方だよ」というメッセージを含んでいます。
そうした信頼のまなざしは、子どもにとって何よりの励ましになります。
ある小学生の男の子が、漢字のテストで20点を取ってしまったことがありました。
普段は真面目に勉強している子ですが、その日は緊張と焦りで間違いが重なってしまったのです。
しょんぼりして帰ってきたその子に、お母さんが「大丈夫。いつも頑張ってるの、ちゃんと知ってるよ」と言った瞬間、
その子は泣きながらも笑顔を取り戻したそうです。
2.「よくここまでやってきたね」
結果がどうであれ、その過程で積み重ねてきたものを認める言葉は、子どもの心を温かく包みます。
「よくここまでやってきたね」という言葉には、子どもが努力し続けた時間への敬意と、大人の深い共感が込められています。
子どもたちは、「よい成績」や「完璧な結果」だけが評価されると感じてしまうと、失敗を恐れて挑戦しなくなります。
しかし、途中で投げ出さずに取り組んだことや、少しずつでも続けてきたことを見ていてくれる大人がいるとわかれば、
子どもは「また頑張ってみよう」という気持ちになれるのです。
たとえば、逆上がりの練習をしていた女の子が、何度やってもできずに泣いていました。
周りの子はすでにできるようになっていたため、余計に自信をなくしていたのです。
そのとき、担任の先生が「毎日あきらめずに練習していたのを見ていたよ。
よくここまでやってきたね」と声をかけました。
その言葉を聞いた彼女は、次の日からまた練習を再開し、ついに成功したそうです。
3.「あなたならできるよ」
この言葉は、子どもに「自分の力を信じてごらん」というメッセージを届けます。
子どもは、自信を持ちたくても不安が先立つものです。
そんなときにこの言葉をかけられると、「そうか、自分でもやってみていいんだ」と前向きな気持ちになれるのです。
この言葉の大切なポイントは、ただ励ますだけでなく、子ども自身の力に期待しているということを示す点にあります。
「できるかもしれない」ではなく、
「あなたならできる」と言い切ることで、信頼と可能性を示しています。
ある中学1年生の男の子が、学級委員に立候補するかどうか悩んでいました。
「人前で話すのが苦手だから無理かも」と消極的でしたが、
家庭でお父さんが「おまえは人の気持ちをよく考えるし、きっと役に立てる。おまえならできるよ」と言ったことで、
彼は一歩踏み出しました。そして、選ばれた後には、学校生活にも自信を持つようになったそうです。
4.「見てたよ」
人は誰しも、「誰かに見てもらえている」という感覚があると、頑張ろうという気持ちが湧いてきます。
特に子どもにとって、「大人が自分の姿をちゃんと見てくれていた」という経験は、安心感とともに誇りにつながります。
この言葉は、目立たないけれど頑張っている子ども、静かにコツコツ努力している子どもに対して、
非常に効果的です。「見てたよ」という言葉は、存在を認める行為でもあります。
ある女の子が、休み時間に教室の掃除をしていたのを先生が見かけました。
授業のあとで先生が「さっき、静かに掃除してくれてたの見てたよ。ありがとうね」と言っただけで、
その子は驚いたように顔を上げ、うれしそうに微笑んだそうです。
「見てもらえていた」という経験が、その子の中に自信の種として残っていくのです。
5.「ありがとう」
「ありがとう」は、感謝の気持ちを表すとともに、子どもの存在や行為を肯定する力のある言葉です。
自分が誰かの役に立てた、自分のしたことが喜ばれたと感じられると、子どもはやる気に満ちていきます。
家庭でも学校でも、大人が「当たり前」と思っていることに対して、子どもが一生懸命に取り組んでいることがあります。
そのようなときに、「ありがとう」と伝えるだけで、子どもは自分の存在価値を感じ取るのです。
たとえば、お家の手伝いで食器を片付けてくれたとき、弟や妹の世話をしてくれたとき、
先生の手伝いを率先してしてくれたとき。そのすべてに「ありがとう」と言葉をかけてみてください。
その一言が、次の行動へのやる気を引き出す原動力になります。
ある保護者の方が、「息子に『ありがとう』を意識して伝えるようにしたら、
だんだんと自分から手伝ってくれるようになった」と話してくれたことがあります。
感謝されることが嬉しくて、もっと誰かの役に立ちたいと思えるのです。
子どもがやる気を出す「5つの言葉」は、どれもシンプルで日常的な言葉です。
しかし、心を込めて伝えれば、それは子どもの中で大きなエネルギーとなります。
子どもたちは、自分のことを見守ってくれる存在、自分を信じてくれる存在の言葉に、
強く心を動かされます。そしてその経験が、
やがて「自分でやってみよう」「挑戦してみよう」「失敗してもまた立ち上がればいいんだ」という前向きな姿勢を育んでいくのです。
私たち大人にできることは、特別な指導や技術だけではありません。
日々のやりとりの中で、心に寄り添った言葉を届けることです。
小さな言葉の積み重ねが、子どもの可能性の扉を開いていくことを、忘れずにいたいものです。