子どもが成長するうえで、試練や困難にどう向き合うかは非常に重要なテーマです。
私たち大人は、子どもを守りたいという思いから、
ついその前に立ちはだかる壁を取り除いてしまいがちです。
しかし本当に必要なのは、子どもが自分自身でその壁に向き合い、
乗り越えていく経験をすることなのではないでしょうか。
試練とは、何も大きなものである必要はありません。
たとえば友達とのトラブル、学校の勉強のつまずき、
思い通りにならない部活動など、日常の中にはいくつもの小さな試練があります。
これらにどう取り組むか、そしてそれを乗り越えるためにどのような支えを受けるかが、
子どもの将来の土台を形作っていきます。
子どもが試練に直面したとき、
最初に感じるのは「無理かもしれない」「怖い」「逃げたい」といった不安や恐れでしょう。
それは決して弱さではありません。
むしろ、自分の限界を感じる力があるという証です。
大切なのは、そのような感情を否定するのではなく、
子ども自身がその気持ちと向き合えるように寄り添うことです。
私たち大人がすべきことは、子どもの苦しさに共感しながらも、
「あなたならできる」「やってごらん」「見守っているよ」というメッセージを伝えることです。
人は、得意なことばかりをやっていても本当の力は育ちません。
むしろ、苦手だと感じること、できなかったことに挑戦し、
少しずつできるようになる過程にこそ、大きな学びがあります。
「苦手」や「できない」は、成長の種です。
その種をどのように育てるかが、弱みを強みに変えていく鍵となります。
たとえば、引っ込み思案で人前で話すのが苦手な子どもがいたとします。
その子に無理に発表をさせても、逆効果になるかもしれません。
しかし、安心できる場で、自分の思いを少しずつ言葉にする練習を重ね、
誰かに「伝わったよ」と言ってもらえたとき、
その子の中に「やってよかった」「自分にもできることがあるんだ」という小さな成功体験が芽生えます。
くき学園では、中学校3年生の生徒たちに面接練習・指導を行っています。
そこで、進学するまでにその子らしい資質面を向上させるのです。
やがてその経験が「人とつながる喜び」へと変わり、
苦手だったコミュニケーションが、その子の強みへと成長していくのです。
このようなプロセスを経て、子どもは「逃げなくてよかった」という達成感を得ます。
それは、単なる自信ではありません。
自分の力で困難を乗り越えたという確かな実感が、次にまた挑戦するための原動力になります。
成功体験が積み重なることで、子どもは「きっと自分は大丈夫」と思えるようになります。
これは、生きていくうえで何よりも大切な「自己効力感」につながります。
一方で、試練を与えるときに注意すべき点もあります。
それは、子ども自身の力で乗り越えられる「適度な困難」であることです。
あまりに高い壁を課してしまえば、挫折や失敗感だけが残り、自信を失わせてしまうこともあります。
ですから、子ども一人ひとりの発達段階や性格に応じた、ちょうどよい試練を見極める大人の目が欠かせません。
また、試練に挑む過程では、失敗や後退もつきものです。
そのとき、大人が「なぜできなかったの?」と責めたり、
「だから無理だと思ったんだ」と結論づけたりすれば、
子どもは「やっぱり自分はダメなんだ」と思い込んでしまいます。
むしろ、「よくがんばったね」「どうしてうまくいかなかったのかな?一緒に考えてみよう」
と寄り添うことが、次のチャレンジにつながります。
失敗したという事実以上に、「失敗しても受け止めてもらえる」という安心感が子どもにとっては重要なのです。
乗り越えた試練の数だけ、人は強く、やさしく、たくましくなっていきます。
思春期を迎える頃になると、自分で自分の進む道を選ぶ機会も増えてきます。
そのとき、自分の弱さを知っている子どもは、誰かの弱さにも気づけるようになります。
そして、「困難の中にも学びがある」ということを体感してきた子どもは、
たとえ苦しい状況にあっても「なんとかなる」「自分を信じて進んでみよう」と思えるようになるでしょう。
生きる力とは、何でもうまくやれる能力ではありません。
うまくいかなくても、立ち上がる力。不撓不屈あきらめずに試みる力。
そして、誰かと支え合いながら前に進む力です。
その根っこにあるのは、「乗り越えた経験」と「受け止めてくれた人の存在」です。
私たち大人にできることは、子どもにとっての「試練」を恐れず、
その中にこそ育ちのチャンスがあることを信じることです。
そして、子どもがその壁に挑む勇気を持てるように、
そっと背中を押し、乗り越えたときには一緒に喜びを分かち合うことです。
大人になれば、誰しも思い通りにいかないこと、理不尽なことに直面します。
そのとき、子どもの頃に「逃げずに挑戦してよかった」「やればできるんだ」と感じた経験があれば、
それが人生を支える大きな力になります。
子どもたちが持っている無限の可能性を信じ、
彼らが「試練」を「成長の機会」として受け止められるような関わりを、私たちは日々意識していきたいものです。