子育てにおいて、もっとも基本でありながら、
もっとも難しいことのひとつが「我が子を信じること」ではないでしょうか。
親として、「こう育ってほしい」「これだけは避けてほしい」という願いがあるからこそ、
つい口を出し過ぎてしまったり、先回りして道を整えてしまったりすることがあります。
しかし、子ども自身の力で考え、挑戦し、失敗し、乗り越えていく経験こそが、
その子を大きく育ててくれるのです。その第一歩は、「この子にはきっとできる」と信じて見守ることなのです。
信じきれなかった過去の失敗例
ある母親は、息子が小学3年生の時に「学級委員に立候補したい」と言った時、
不安な気持ちから「やめておいたほうがいいんじゃない?」と反対しました。
息子は普段あまり目立つタイプではなく、友人関係でもやや内向的な一面があり、
親から見ると「負担になるのでは」という心配が先に立ったのです。
しかし息子はその言葉にがっかりした表情を見せ、結局立候補は断念しました。
数カ月後、別の子が学級委員を務める姿を見ながら
「ぼくもああなってみたかった」とぽつりとつぶやいたそうです。
その一言に母親は深く胸を打たれ、自分の「守るつもりだった言葉」が、
実は息子の可能性を摘んでしまっていたことに気づいたのです。
このような「信じて見守れなかったこと」による後悔は、
多くの親にとって共感できるものではないでしょうか。
信じるという行為には、時に勇気が必要です。
「うまくいかなかったらどうしよう」「失敗したら傷つくのでは」という心配はつきまといますが、
それでもなお、信じて任せることは、子どもの自己肯定感と挑戦心を育てる第一歩なのです。
信じて任せた成功例
一方で、信じてよかったという経験もあります。
ある父親は、中学1年生の娘が「合唱コンクールでピアノ伴奏に立候補したい」と言った時、
正直驚いたそうです。これまでピアノの練習に熱心とはいえず、
「本当にできるのか?」という疑問もありました。
しかし、娘が真剣な表情で「やってみたい」と言ったその眼差しに、
「この子を信じてみよう」と決意したのです。
結果、娘は自分で練習計画を立て、毎日少しずつ練習を重ね、
本番では見事な演奏を披露しました。
クラスの友達からも「ありがとう!」と感謝され、自信を大きくつけたとのことです。
父親は「もし最初に『無理じゃない?』と口にしていたら、この経験はなかったかもしれない」と振り返ります。
こうした体験が積み重なることで、
親も「信じて任せる」ことへの安心感を少しずつ得ていけるのです。
子育てにもPDCAを
子育てに「正解」はありません。
しかし、日々の関わり方を見直し、改善していくサイクルとして「PDCA(Plan・Do・Check・Act)」の考え方は非常に有効です。
子どもの成長は常に変化していますから、
その時々に応じた関わり方を柔軟に見直すためにも、この考え方は親自身の軸として役立ちます。
短期目標:日常の小さな挑戦を見守る
【Plan】
子どもが「やってみたい」と言ったことを、まずは否定せずに受け入れる姿勢をもつ。
たとえば、「今日は自分で朝の支度を全部する」といった日常的なことでも良いのです。
【Do】
その挑戦を実際にやらせてみる。失敗しても手を出さず、見守ることを心がけます。
【Check】
結果がどうであれ、子どもと一緒に振り返ります。
「どこがうまくいった?」「次はどうしたい?」という対話を大切にします。
【Act】
次の目標を子どもと一緒に立て、親もまた支え方を見直します。
たとえば、「明日は少し早起きしてみようか」と提案してみるのもよいでしょう。
中期目標:学校生活や友人関係での成長を支える
【Plan】
学期の初めに、「今学期、どんなことを頑張りたい?」と子どもに問いかけ、
目標を共有します。親は見守る役割を明確にします。
【Do】
日々の生活で、子どもが目標に向かって努力する姿を温かく見守りつつ、
必要に応じて励ましたり、環境を整えたりします。
【Check】
定期的に、「どう?がんばれてる?」と確認しますが、強制や評価のためでなく、
子どもの気持ちに寄り添うための問いかけを意識します。
【Act】
成果だけでなく、過程を認める姿勢を持ちます。
「毎日忘れずに取り組んでいたね」と努力を認めることで、子どものやる気と自己信頼感を高めていきます。
長期目標:自立と人生設計を後押しする
【Plan】
将来の夢や進路について、子どもが自分の意志で考える機会を設けます。
親はあくまで伴走者であり、「この道に進ませたい」という主導権は持ちません。
【Do】
子どもが自分で決めた道に向かって行動する中で、迷いや挫折も含めて経験させます。
親はアドバイスよりも「信じて見守る」ことに重きを置きます。
【Check】
節目ごとに、子どもと話し合う機会をもちます。
「あのとき、どう感じた?」「次はどんな一歩を踏み出したい?」というように、子ども自身の成長の言語化を助けます。
【Act】
子どもが少しずつ「自分で人生を切り開いていく力」をつけていることを信じ、
応援するスタンスを貫きます。時に失敗しても、
「あなたなら乗り越えられる」と伝えることが、最大の支援になります。
「信じててよかった」という未来へ
子どもは、自分を信じてくれる大人がいることで、自らの可能性を信じることができます。
そして、自分の足で歩む力を徐々に育てていくのです。
たとえその道のりが平坦でなくとも、我が子を信じることを選んだ親には、「あの時、信じてよかった」と思える日が必ず訪れます。
子育てにおけるPDCAは、決して「管理」や「成果」のための手段ではなく、
親子の関係を見つめ直し、よりよい関わりを築くための「思考の整理法」として活用されるべきものです。
そしてその中心に、「まず我が子を信じる」という揺るぎない姿勢があることこそが、
子どもの明るい未来と、親の確かな安心につながっていくのです。