協調・協働的な学びを

「協調」や「協働」という言葉は、学校や地域の教育活動の中でもよく耳にします。

似ている言葉ですが、少し意味が異なります。「協調」とは、

相手と心地よく関わるために、自分の行動や気持ちを調整することです。

一方「協働」とは、同じ目標に向かってお互いに力を出し合い、

役割を分担しながら取り組むことです。

この二つは、どちらか一方だけでは成り立たず、

どちらも相手を思いやる気持ちが土台になっています。

 

今年度、地域の子どもたちを対象に、

サッカー教室、器楽演奏教室、水泳教室が実施されました。

それぞれの活動は運動や音楽という異なる分野ですが、

そこには共通して「協調・協働的な学び」が息づいていました。

ここでは、その様子と子どもたちが得た学びを紹介します。

 

サッカー教室 ― 役割を理解し、チームで動く

サッカーは、まさに協働が求められるスポーツです。

ひとりがいくら上手くても、試合は勝てません。

パスをつなぐ人、攻め込む人、守る人、それぞれの役割がかみ合ってこそゴールにつながります。

 

教室の初日、ある子は「自分でゴールを決めたい」と強く思っていました。

しかし、何度もボールを奪われ、チャンスを逃してしまいます。

するとコーチが「味方を使うのも立派な技術だよ」と声を掛けました。

次の練習では、その子は味方にパスを出し、チームで攻め込む動きを試しました。

すると見事にゴールが決まり、みんなで喜び合うことができました。

この経験は、「自分だけでなく仲間を信じる」ことの大切さを実感させるものでした。

 

また、試合後の振り返りでは、

「自分が守っているとき、後ろから声をかけてくれる仲間がいると安心する」という意見も出ました。

声掛けやアイコンタクトといったコミュニケーションが、協調を生み、協働を深めるのです。

 

器楽演奏教室 ― 音を合わせるための心の調律

音楽の世界でも、協調・協働は欠かせません。

特に合奏は、ただ楽譜どおりに弾くだけでは成り立ちません。

相手の音を聴き、自分の音量やテンポを調整することが必要です。

教室では、まず一人ずつが簡単なメロディを練習しました。

最初は自分の演奏に集中していた子どもたちも、

合奏が始まると「自分の音が大きすぎるかも」「少し遅れてしまった」と気づきます。

ある子は「自分のパートが合っていても、全体のバランスが崩れると曲が変になる」と話しました。

そこで指導者は「耳で聴く練習」を取り入れ、相手の音を聴きながら演奏するように促しました。

 

やがて、全員の音がぴたりと合った瞬間、教室全体が温かい空気に包まれました。

その達成感は、一人での練習では味わえないものです。

子どもたちは、「みんなで作る音楽」こそが合奏の魅力であり、協働の喜びだと感じられたようです。

 

水泳教室 ― 支え合いながら挑戦する

水泳は一見すると個人競技のようですが、

練習の中では仲間同士の支え合いが多く見られます。

特に、泳ぎに不安を感じる子どもにとって、仲間の励ましやアドバイスは大きな力になります。

 

ある日、バタ足の練習でなかなか進めない子がいました。

少し焦り始めたその子に、隣で泳いでいた子が「足をもっと大きく動かすといいよ」と声を掛けます。

さらに「じゃあ一緒にやろう」と同じペースで練習を始めました。

結果、その子は少しずつ進めるようになり、最後には笑顔で「できた!」とガッツポーズを見せました。

 

また、プールサイドでは、順番を譲ったり、コースを譲り合ったりする姿も見られました。

安全のためのルールを守ることも、相手への思いやりから生まれる協調の一つです。

 

協調・協働的な学びの共通点

三つの教室を振り返ると、分野は異なっても共通する学びがあります。

 

相手をよく見る・聴くこと

サッカーでは仲間の位置を確認し、器楽演奏では相手の音を聴き、

水泳では相手の様子に気づくことが大切でした。観察や傾聴は、協調の第一歩です。

 

自分の役割を理解し、果たすこと

どの活動でも、自分に与えられた役割があります。

それを責任を持って果たすことで、全体の成果が生まれます。

 

助け合う・支え合うこと

困っている仲間に声を掛けたり、行動で助けたりすることが、協働の力を高めます。

 

一緒に喜びを分かち合うこと

ゴールが決まった瞬間、音が揃った瞬間、泳げるようになった瞬間・・・。

その喜びは仲間と共有することで何倍にも大きくなります。

 

協調・協働の力は日常にも生きる

このような力は、教室の中だけで終わるものではありません。

学校の授業や行事、家庭での生活、地域での活動にもつながります。

例えば、友達と課題を進めるとき、家族で家事を分担するとき、

地域のイベントで役割を果たすとき――そこには必ず協調や協働が求められます。

現代社会は複雑で、一人だけの力で解決できることは限られています。

だからこそ、子どもたちが小さいうちから協調・協働の力を身につけることは、将来にわたって生きる力となります。

 

今の時代だからこそ 協調・協働的な学びを

サッカー教室、器楽演奏教室、水泳教室を通して、

子どもたちは仲間と関わりながら活動する楽しさや達成感を経験しました。

その中で、相手を思いやる協調、力を合わせて目標に向かう協働という、どちらも大切な力を育むことができました。

「自分が頑張る」ことと「仲間と力を合わせる」ことは、

一見別のようでいて、実は同じ根っこから生まれます。

それは「相手も自分も大切にする心」です。

この心を持ち続ければ、子どもたちはこれからの人生で、

さまざまな場面で協調・協働の力を発揮していけるでしょう。