ある教室では、中学生・高校生がスマートフォンやタブレットの使い方について真剣に話し合いました。
それぞれが日々の生活で触れているツールでありながら、
使い方によっては人間関係や学習に良い影響も悪い影響も与えうるという現実を前に、
生徒たちは自分の考えや体験を語り合い、互いの意見を聴く姿がありました。
このような「話し合い」は、まさに今の時代だからこそ大切にしたい学びの一つです。
情報があふれ、コミュニケーションが画面越しに行われることも多くなった現代において、
自分の言葉で語り、相手の声に耳を傾け、思考し、判断し、そして共により良い方向を模索する力は、
将来を生き抜く上で必要不可欠です。
話し合いは「話し愛」
「話し合い」という言葉を、「話し愛(あい)」ととらえる視点があります。
単に意見を述べるだけではなく、相手への敬意と愛情をもって、
互いに理解し合おうとする心構えが含まれているのです。
子どもたちのスマートフォンの使い方に関する話し合いの中でも、
「友だちと一緒にいてもスマホばかり見てしまう」「使いすぎて家の人に怒られた」などの声があがり、
それに対して「それって相手が寂しくなるよね」「時間を決めて使えばいいんじゃないかな」といった意見が出てきました。
そこには、他者の気持ちに寄り添おうとする姿勢が見られました。
つまり、話し合いの過程そのものが、思いやりの心を育む実践の場となっているのです。
思考力・判断力の成長につながる対話
話し合いの魅力は、「思考力」と「判断力」が自然と伸びることにもあります。
たとえば、誰かの意見を聞いて自分と違うと感じたとき、
なぜそう感じるのかを考える機会になります。
そして、自分の意見が正しいかどうか、もっと良い考えはないかと試行錯誤する中で、思考力が育まれていきます。
さらに、多くの意見を聞いた上で、「この場合はこうするのが良い」と結論を導くことは、
まさに判断力の訓練となります。
実際、スマホの話し合いでも、
「夜遅くまで使わないように時間を決めよう」「通知をオフにすることで集中できるようになるよ」など、
生活に生かせる具体的なルールが提案されていました。
自分たちで課題を認識し、対応策を考え、実践につなげる。
これこそが主体的な学びであり、話し合い学習の醍醐味です。
話し合いの実践方法―安全な場づくりが鍵
話し合いを効果的に進めるためには、「安全な場づくり」が欠かせません。
安全とは、物理的な意味だけでなく、心理的な安心感を指します。
「どんな意見でも受け止めてもらえる」「否定されない」という雰囲気があるからこそ、
自分の意見を言ってみようという気持ちが生まれるのです。
そのためには、ファシリテーター役の教師や大人がまず子どもの発言にしっかりと耳を傾け、
「それ、いい考えだね」「なるほど、そう思ったんだね」と共感を示すことが大切です。また、話し合いの目的を共有し、ルール(人の話をさえぎらない、笑わない、否定しないなど)を明確にしておくことも有効です。
話し合いがうまくいくと、子どもたち自身が互いの違いを面白がったり、学び合いの関係を楽しめるようになります。自分と違う意見に出会うことは、自己理解の深化にもつながり、人間関係を豊かにします。
思いやりの心を育てる話し合い
スマートフォンの使い方を話し合う場面では、
ある中学生が「友だちがずっとスマホを見ていて、話しかけても気づいてもらえなかった」と語りました。
それに対し、周囲の生徒たちは一瞬驚いた表情を見せた後、
「自分もそうしたことがあるかもしれない」と振り返る姿がありました。
こうしたやりとりは、単にルールを決めるためだけでなく、他者の立場や気持ちを理解する力、
つまり思いやりの心を育てる場となっています。
今の時代、SNSやゲーム、動画など子どもたちの周囲には魅力的なコンテンツが溢れています。
その一方で、対面の会話や表情、感情の読み取りといった人と人との関係性が希薄になりがちです。
だからこそ、学校や放課後の活動の中で、意図的に「話し合い」を取り入れ、対話の力を育てていく必要があります。
今の時代だからこその価値ある学び
情報機器が身近にある今の時代だからこそ、
子どもたちには「使い方を自分で考える力」が求められます。
ただ与えられるままに消費するのではなく、
自分と他者にとってどのような使い方が健全なのかを考え、選択する。その力は、話し合いを通して育つものです。
そして、そうした力はスマートフォンの使い方だけにとどまらず、
将来、社会の一員としてさまざまな課題に向き合う場面でも大いに役立ちます。
「自分で考える」「人と話す」「他者の意見を受け止める」「よりよい答えを探す」という一連のプロセスは、
どんな時代になっても普遍的に大切な力なのです。
話し合いから生まれる未来への希望
ある高校生がこう語っていました。「スマホを使うこと自体が悪いんじゃなくて、
自分や周りがどう感じるかを考えることが大切なんだと思う」。
この言葉には、相手を思いやる視点と、自分自身の行動を省みる姿勢が込められていました。
まさに話し合いを通して育まれた成長の証です。
「話し愛」の中に生まれる小さな気づきや変化が、
やがて子どもたちの人間力を育み、未来を切り拓く力となるでしょう。
話し合いは、知識を詰め込むだけの学びではなく、心を耕す学びです。
そして、その土壌にこそ、思いやりや協調、主体性といった現代に必要な価値が根を張るのです。
私たち大人も、子どもたちの声に耳を傾け、
共に考える時間を大切にしたいと思います。
話し合いは、未来をつくる「愛ある学び」の第一歩なのです。