のんびり屋さんは短所ではない

私たちは日々、たくさんの子どもたちと接しながら、

子ども一人ひとりに異なる個性があることを実感しています。

その中でも、「のんびり屋さん」と呼ばれる子どもたちがいます。周囲より行動が遅く、

考えごとをしていて行動に移るまでに時間がかかることもしばしばあります。

そのような子どもに対し、

大人はつい「もっと早くしなさい」「どうしてそんなに遅いの」と声をかけてしまいがちです。

しかし、本当にその子の「のんびり屋さん」という性格は短所なのでしょうか。

むしろ、これはその子が持つ「強み」であり、その子らしさを活かした接し方が必要です。

 

「のんびり」は悪いことではない

近年は、情報化社会の加速により、スピードや効率が求められる場面が増えました。

しかし、人にはそれぞれに合ったペースがあります。

すべての人が機械のように素早く動けるわけではありません。

むしろ、のんびりしているからこそ気づけること、感じ取れることがあるのです。

 

例えば、周囲が急いでいて気づかない小さな変化に気づくこと、

じっくり考えてから言葉にすることで周囲を和ませること、

相手の気持ちを丁寧に受け止めることなどは、のんびり屋さんが得意とする面でもあります。

せっかちな人が多い社会だからこそ、

そのようなゆったりした存在は周囲を落ち着かせ、安心感をもたらす役割も担っています。

 

また、「ゆっくり=劣っている」という先入観は、一般の場では根強いものですが、

焦らずじっくり取り組む姿勢は、長い目で見れば大きな力となります。

時間をかけて理解し、自分のものとして吸収する力は、学びにおいて重要な要素です。

一時的な成績や結果だけでなく、将来的に深い理解につながる可能性を秘めています。

 

 のんびり屋さんへの接し方

では、そのようなのんびり屋さんに対して、大人はどのように接すれば良いのでしょうか。

まず、大切なのは「否定しないこと」です。「また遅い」「何をしているの」と責めるような言葉は、

その子を委縮させ、自己肯定感を下げてしまいます。

のんびりしていることは、その子のリズムなのだと理解して接することが第一歩です。

また、その子なりに「時間がかかってもよい」という安心感を持たせてあげることが大切です。

焦らせると、かえって思考が止まり、さらに遅くなる場合もあります。

そのため、大人は「ゆっくりで大丈夫」「自分のペースでいいよ」と声をかけ、

その子のリズムに合わせた対応を心がけましょう。

 

例えば、準備に時間がかかる子どもに対しては、

「あと5分で出発するよ」「そろそろ準備を始めようか」といった具体的な声掛けをし、

時間の感覚を少しずつ持たせていくことも効果的です。

しかし、これは叱責ではなく、あくまで穏やかに伝えることが肝心です。

 

また、急かさずとも「自分でできた」という経験を積ませることが成長につながります。

たとえ時間がかかっても、子どもが自分の力でやり遂げた経験は自信となり、次への意欲にもつながっていきます。

 

のんびり屋さんのよさを活かす環境づくり

「のんびり屋さん」は、じっくり型の学びに向いていることが多く、

細かい作業や丁寧さを求められる場面で本領を発揮します。

絵を描く、工作をする、文章を考えるなど、

創作活動では時間を惜しまないことが素晴らしい成果につながります。

また、周囲の気持ちに敏感な子も多く、相手に寄り添う力が自然と育まれていく場合もあります。

 

そのため、大人は急がせるのではなく、むしろその良さを伸ばせるような環境を整えてあげることが大切です。

ゆっくり取り組める時間を確保したり、焦らずに成果を認めてあげる姿勢が、

その子の成長を支えます。

 

また、グループ活動でも無理に周囲に合わせさせるのではなく、

ペースの違いを互いに認め合う雰囲気づくりが必要です。

子ども同士でも「急がない子がいても大丈夫」「一人ひとりにリズムがある」ということを学ぶ機会となり、

協調性や理解力を養うことができます。

 

大人が焦らない姿を見せること

のんびり屋さんと関わるとき、大人自身が焦らずゆったりとした気持ちを持つことも大切です。

子どもは大人の姿をよく見ています。

大人が急いでいる、イライラしている姿を見れば、

その焦りは子どもにも伝わり、不安や自信の喪失につながります。

 

逆に、大人がゆっくりと話しかけ、穏やかに見守ることで、子どもも安心し、

自分のペースで物事に取り組むことができます。

このような関わりは、子どもだけでなく、

大人自身にとっても心の余裕をもたらし、互いに良い影響を与え合う関係につながります。

また、忙しい日々の中で、子どもののんびりした姿に癒される場面もあります。

ふと立ち止まり、子どもと同じ目線でゆっくりと過ごす時間は、

大人にとってもかけがえのないひとときになるでしょう。

 

 

まずは「その子らしさ」を認める関わり

「のんびり屋さん」という性格は、決して短所ではありません。

それは、その子が持って生まれた大切な個性であり、成長の可能性を秘めた宝物です。

周囲より少し遅い歩みかもしれませんが、その分だけ多くのものを感じ、

吸収し、やがて確かな力となっていくのです。

私たち大人に求められるのは、その子が安心して自分のペースで歩めるよう支えること、

焦らせず、その子の良さを認めてあげることです。

「急ぐことが正しい」という考え方を押し付けず、「その子らしさ」を受け止め

伸ばしていく姿勢が何よりも大切です。

ゆっくりでも、一歩ずつでも、その子は確かに前へと進んでいます。

その歩みを信じ、温かく見守ることで、子どもは自分のリズムを大切にしながら、

豊かな人間力を育んでいくのです。

私たちはその成長を支える存在であり続けたいと願っています。