子どもたちへの指導というものは、時に目に見える成果を焦って求めてしまいがちです。
たとえば「今この場で言われたことを理解し、行動に移すこと」が「よい指導の結果」と捉えられがちです。
しかし、本当に意味のある学びとは、今すぐに結果として表れるものばかりではありません。
むしろ、そのときにはピンとこなくても、10年後、20年後の人生のある場面でふと心によみがえり、
「あの時、先生が言ってくれた言葉の意味がようやくわかった」と気づくことこそが、真の学びではないでしょうか。
私たち大人が子どもに届ける言葉や関わりの一つひとつは、
今だけのためにあるのではなく、子どもの未来に向けた「心の種まき」です。
その種が芽を出す時期は人それぞれであり、すぐに結果を求めることはできません。
しかし、その種は確実に子どもの心の中で育ち、やがて人生のどこかで生きる力となって現れてくるのです。
ここで大切になってくるのが、「知・情・意」のバランスです。
知識だけを教えるのではなく、「情=心の豊かさ」や「意=やり抜く力」も同時に育んでいく必要があります。
たとえば、テストの点数を上げることばかりに注目してしまうと、
子どもは「間違えること=失敗」と捉えてしまいます。
しかし、失敗を通して悔しさを味わい、そこから立ち直る経験こそが、
「意」の力を鍛え、「情」の深みを増していくのです。
そして、その上に積み重ねられた知識こそが「生きた知」となり、
バランスのとれた人間力へとつながっていくのです。
人間力とは、単に「頭が良い」とか「優しい」といった一面的なものではありません。
困難な状況に立ち向かう勇気、他人の気持ちを思いやる優しさ、
自分の言葉で考えを語れる表現力、そして人との違いを受け入れる寛容さ・・・
それらすべてを統合したものが「人間力」なのです。
そしてこの人間力こそが、将来子どもたちが社会の中で豊かに、
そして幸せに生きていくための土台となります。
私たちが願うのは、子どもたちが自分の力で道を切り開き、
自分らしく輝いて生きていく姿です。その姿を支えるのが「幸福」感です。
幸福とは、与えられるものではなく、「自分の中にある価値や意味を見出す力」によって得られるものです。
つまり、「あのとき、先生や親が言ってくれたことが、今の自分を支えてくれている」と思えるような経験が、
子どもたちの心に深く根づいていることが大切なのです。
では、私たちは日々どのような関わりを通して、
子どもたちに「10年後、20年後に気づく真の学び」を届けることができるのでしょうか。
一つには、「正しさ」を押しつけるのではなく、「感じる力」を育てることが挙げられます。
たとえば、「ありがとう」を言いなさいと命じるよりも、大人自身が誰かに感謝し、
「ありがとう」と心から伝える姿を見せること。
そうした行動こそが、子どもの心に響く学びとなります。
また、誰かが困っていたときにそっと手を差し伸べる大人の姿は、
「人に優しくすることの意味」を、言葉ではなく行動で教えてくれるのです。
もう一つ大切なのは、「待つこと」です。子どもは大人が思うよりもずっと時間をかけて、
自分の中に学びを蓄積していきます。
だからこそ、すぐに成果を求めず、
「今はわからなくても、きっと心に残っている」と信じることが大人には求められます。
そして、必要以上に手を出さず、子どもがつまずきながらも自ら立ち上がる経験を支えること。
それが、「意志を持って生きる力」を育む土壌となるのです。
子どもの頃にかけられた何気ない一言が、大人になった今でも心の中に残っている・・・
そんな経験はありませんか?
逆に、子ども時代にもっと寄り添ってほしかった、もっと信じてほしかったと思う経験も、
誰しも一度はあることでしょう。それらの経験は、良くも悪くも「心の記憶」として、
人生の大切な節目に顔を出すことがあります。
だからこそ、今、目の前の子どもにどのような言葉を届けるか、
どのように関わるかということには、未来を形づくるだけの大きな意味があるのです。
今、私たちが子どもたちに与えることができる最高の贈り物は、
「信じて待つこと」「共に喜び、共に悩むこと」「人生は失敗も含めて学びであると伝えること」ではないでしょうか。
子どもたちが何かに挑戦し、失敗し、そしてもう一度立ち上がろうとするその時に、
「あなたなら大丈夫。どんなときも応援しているよ」という温かいまなざしがあれば、
きっと子どもは前に進んでいけるはずです。
子どもたちの10年後、20年後が、たとえ困難な時代であったとしても、
自分の力で道を切り開き、人と支え合いながら、明るい未来を築いていけるように・・・。
そのために私たち大人が今できることは、目先の成果にとらわれず、
心の奥底に届くような言葉と態度で、子どもたちの人間力を育てていくことです。
時間を超えて届く学びこそが、真の学び。子どもが成長し、
自分自身の人生を歩む中で、「あのときの言葉があったから、今の自分がある」と思えるような指導こそが、
私たちが目指すべき姿なのではないでしょうか。