まごころ

子どもと向き合うとき、大人の真心がどれほど大きな影響を与えるかを、

私たちは改めて見直す必要があります。

子どもは、まだ言葉や態度に頼らずとも、周囲の大人の表情や声の調子、

まなざしの中にある「心」を感じ取る力を持っています。

そしてその「心」が、本当に自分のことを大切に思っているか、

信じてくれているかを、敏感に察知しているのです。

子育てや教育の現場では、「甘えさせる」と「甘やかす」の違いがたびたび話題になります。

どちらも似たように見える行動かもしれませんが、そこには明確な違いが存在します。

甘えさせるとは、子どもが心のよりどころを求めているとき、

十分に安心感を与えることです。

 

一方、甘やかすとは、子どもが自分の都合でわがままを言ったときに、

それを無条件に受け入れてしまうことです。

子どもが疲れていたり、不安を感じていたりするときに、

大人が温かく受け止めてあげることは、甘えさせるという行為にあたります。

このような行為は、子どもが自分は愛されているという実感を得る大切な機会であり、

その後の自己肯定感の基盤を築くことにつながります。

「ここに戻ってくればいいんだ」「自分は大切にされている」という安心感は、

挑戦する勇気や失敗を恐れない心につながっていくのです。

 

一方で、子どもが自分の欲求を通すために、泣いたり駄々をこねたりしたときに、

何でも言うことを聞いてしまうと、それは甘やかしになります。

これを繰り返すと、子どもは「言えば何とかなる」「自分中心でいいんだ」と思うようになり、

周囲との関係性の中で困難に直面しやすくなってしまいます。

甘やかしは、一時的には子どもが喜ぶかもしれませんが、

長い目で見たときには、その子の自立を妨げることにもつながります。

 

ここで大切になるのが、「信頼関係の構築」です。

子どもは、自分の気持ちや行動が、大人にどう受け止められるかによって、

少しずつ人との関係の築き方を学んでいきます。

大人がいつも同じ姿勢で、ぶれずに子どもに関わっていくことで、

「この人は信じても大丈夫だ」という気持ちが生まれます。

信頼とは、瞬間的に生まれるものではなく、日々の積み重ねの中で育まれていくものです。

 

子どもが何かに失敗したとき、感情的に叱るのではなく、その気持ちを受け止め、

「どうしたら次はうまくいくかな?」と一緒に考える姿勢を見せることが、

信頼関係を深める大きな鍵となります。怒るよりも、寄り添い、見守る。責めるよりも、考えさせる。

その積み重ねが、子どもにとって「大人とはこういう存在なんだ」「自分は大人に支えられている」という安心につながっていくのです。

また、大人自身が真心をもって子どもに関わることで、

子どもは「人との関わりの基本」を身につけていきます。礼儀や思いやり、助け合いといった価値観は、

言葉だけで教えられるものではなく、身近な大人の姿から学ぶものです。

大人が誠実に人と接し、感謝や敬意を表す姿を見せることは、

子どもが真の社会人になるための土台をつくる上で、非常に重要な意味を持ちます。

 

社会に出たとき、必要とされる力は、学力や技術だけではありません。

それ以上に大切なのが、人と関わる力、自分を律する力、相手を思いやる心です。

こうした力は、一朝一夕で身につくものではありません。

幼少期から大人との関わりの中で、自分がどう扱われたか、

自分の思いがどう受け止められたかという経験の中で、少しずつ育まれていきます。

 

つまり、真心をもって子どもに関わるということは、

将来その子が社会に出たときに、真の社会人として自立していくための力を、

今ここで育んでいることと同じなのです。

真心は、見返りを求めず、ただその子の幸せや成長を願って注がれるものです。

だからこそ、子どもの心に深く届き、強く残ります。

そしてその経験は、子どもが将来、他者と信頼関係を築き、

社会の中で役割を果たしながら生きていくための「人間力」となって息づいていくのです。

私たちは、子どもが甘えることを「弱さ」と捉える必要はありません。

むしろ、甘えることができる環境があることこそが、子どもの心の安定と成長に欠かせない土壌なのです。

そして、子どものわがままをすべて受け入れてしまうのではなく、時には我慢や努力を伝えることもまた、

真心からくる厳しさであり、子どもにとっての愛なのだと思います。

子どもと関わる中で、私たちは何度も迷い、悩み、立ち止まることもあるでしょう。

けれど、その一つひとつの関わりの中に、

「あなたを大切に思っているよ」「あなたの未来を本気で信じているよ」という真心があれば、

必ず子どもの心に届きます。

そしてその真心は、やがて子ども自身が周囲に向けて発信していく大きな愛となって、次の世代へと引き継がれていくでしょう。

 

真心が伝わる関わりは、一見すると非効率に見えることもあります。

時間がかかり、すぐには結果が見えないこともあります。

しかし、それこそが人としての成長を支える本質的な営みであり、

子どもが「人として生きる力」を育んでいくためのかけがえのない時間なのです。

 

子どもが、ただ社会の一員になるだけではなく、

真の社会人として、人の心に寄り添い、信頼を築き、責任を果たすことのできる人になるために、

私たちは今、目の前の子どもに真心を込めて関わっていきたいものです。

その真心が、子どもたちの未来に光を灯し、社会全体を優しく、温かくしていく大きな力になることを信じて。

 

また、教育立県彩の国学舎くき学園では

この真心をもって接するからこそ、教室内ではいつもドラマが生まれるのです。