「子どもは大人の背中を見て育つ」と言われることがあります。
決して目の前で説教をしなくても、言葉より行動のほうが雄弁に語ることを、
私たち大人は本当は知っているはずです。
何気ない振る舞い、口ぐせ、態度、他人との接し方。
それらすべてが、子どもの目にはしっかりと映り込んでいるのです。
大人もかつて子どもだった
思い返せば、私たち大人も、かつては子どもでした。
あの頃の目線で世界を見たとき、どんなふうに感じ、何を考えていたでしょうか。
先生や親が何気なく言った一言で傷ついたり、逆に救われたりした経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
時間が巻き戻って、自分が子どもだったあの瞬間に立ち戻ったとしたら、
私たちは今の自分と同じ判断をするでしょうか?
例えば、クラスで誰かがからかわれていたとき、自分はどんな態度を取っていたか。
親に反抗していた時、自分の気持ちはどこにあったか。
あの頃に戻ったとしても、同じことを繰り返すかどうか・・・。
この問いは、今、子どもと関わる立場にある私たちが、自分のあり方を見つめ直すヒントになります。
大人になると、いつのまにか子ども時代の感覚を忘れてしまいがちです。
ですが、ほんの少しあの頃の感性を取り戻すことで、今の子どもたちと、より温かく、深く関わることができるようになるのです。
小さな一言が大きな力に
「そんなことしてたら、将来困るわよ」と投げつけるように言う言葉と、
「あなたのそのやさしいところ、きっと誰かの力になるよ」と温かくかける言葉。
どちらも、子どもにとって「大人の一言」です。
しかし、その響きは大きく異なり、その後の子どもの行動や自己評価に大きな影響を与えることもあります。
ある小学生の女の子がいました。少し引っ込み思案で、あまり目立たない存在でしたが、
誰かが困っているときにはそっと手を差し伸べる優しさを持っていました。
ある日、その様子を見ていた担任の先生が、何気なくこう言いました。
「あなたって、本当にあたたかい子だね。見ていて気づいたよ。ありがとう。」
それだけの一言でした。
けれど、その子にとってはその言葉が胸に残り、「私は私のままでいいんだ」と思えるようになったのです。
その後、その子は人に寄り添う行動を意識するようになり、堂々と胸を張って人助けをする存在になっていきました。
このように、大人の言葉は、子どもにとって「生きる力の種」になることがあります。
ほんのわずかな一言が、子どもにとっての大きな変化のきっかけになり得るのです。
子どもは「大人の今」を写し取る
子どもたちは、私たち大人が思う以上に、大人の姿をよく見ています。
たとえば、道ばたのゴミを拾う姿、買い物先でレジの人に「ありがとう」と言うかどうか、
電車でお年寄りに席を譲るかどうか?
こうした日常の中の行動が、子どもの価値観や行動指針に自然と影響を与えていきます。
ある中学生の男の子がこんなことを言いました。
「お父さんが、電車の中で誰かにぶつかったとき、すごく丁寧に謝っていた。
あれを見て、自分もそうしようと思った。」親が何も言わなくても、その姿を見て、学び取っていたのです。
一方で、大人の何気ない「ごまかし」や「うそ」も、同じように写し取られてしまいます。
「うそも方便」として済ませるような態度は、
子どもにとって「本音と建前のずるさ」として映ることもあるのです。
だからこそ、大人自身が誠実に、正直に生きようとする姿勢を持ち続けることが大切です。
子どもの未来を育むきっかけに
「子どものために何かをしてあげたい」と思ったとき、大きなことをしなければならないと思う方もいるかもしれません。
しかし、実は一番大切なのは、日常の小さな積み重ねです。
挨拶を交わす、笑顔で迎える、目を見て話を聞く、少しでもできたことを見逃さずに「すごいね」と伝える。
その一つひとつが、子どもの中に自信や安心を育んでいきます。
かつて自分が子どもだった頃、こんなふうに関わってもらえたら嬉しかったなと思うようなことを、
今の子どもたちにしてあげる。それが、次の世代に優しさと希望を手渡すことにつながります。
ある指導員が、こんなエピソードを話してくれました。
子どもが絵を描いていたとき、周りの子どもたちに比べてずいぶんシンプルで、
色も少なく、先生が思わず「もう少し描けるよね」と声をかけようとしたその瞬間・・・。
別の先生が「この余白が、すごくいいね。お空の広さを感じるよ」と声をかけました。
その子はパッと表情を明るくし、自信を持って「この空は、雨がやんで晴れてくるところなんだよ」と話してくれたそうです。
見方一つで、声かけ一つで、子どもの心は変わる。そんな瞬間を見逃さないようにすることが、大人にできる最大の応援なのです。
大人も「育ち続ける存在」である
子どもは大人を見ています。しかし、大人だって完璧ではありません。
時には間違い、感情的になり、自分を見失ってしまうこともあるでしょう。
でも、だからこそ、大人自身も「育ち続ける存在」であることを忘れてはならないのです。
自分の行動を振り返り、子どもに「ごめんね」と言える勇気。
過去の判断を見直し、「今度はこうしよう」と考え直す柔軟さ。
子どもたちは、そうした姿勢からも「生き方」を学びます。
もし時間が巻き戻ったとしても、「また同じことを選ぶ」と胸を張って言える大人でありたい。
もしそう言えないとしたら、今この瞬間から、少しずつでも自分を変えていける大人でありたい。
それは、子どもと向き合うためだけでなく、自分自身の人生を豊かにするためにも必要なことです。
「子どもって、大人の姿を見てますよ。」
この言葉は、注意や警告としてではなく、希望と責任を込めた励ましの言葉です。
私たち大人の言葉や行動が、子どもの未来を育む力になります。
時に迷い、立ち止まりながらも、
子どもたちに「こんなふうに生きていってもいいんだよ」と背中で語れるような存在でありたいと、心から願っています。
ほんの小さな一言が、今日という日が、誰かの人生の一歩を後押しするかもしれないのですから。
また、子どもたちにとっては、自分たちに真剣に向き合ってくれる、真剣に自分のことを考えてくれる
そんな、大人に目を向けます。
ちょっとでも、子どもに背を向けてしまっては・・・子どもたちは、離れていってしまうことでしょう。
そうならぬように、教育立県彩の国学び舎くき学園職員は、みな、子どもたちに真剣に今日も向き合います。
また、子どもだけではなく、それを取り巻くご家庭・地域・学校・自治体に対しても同じです。
そして、私たち大人の力で、子どもたちのため、明るい未来のため力を合わせようじゃありませんか