ゆっくり、でもたしかに育っている子どもたちへ

春のやわらかな陽ざしの中で、新しい学年がスタートしてから、およそ2週間が経とうとしています。


緊張と期待の入り混じっていた4月のはじめから、少しずつ新しい環境に慣れ始めてきた頃です。
登校の足どりが軽くなった子、教室での表情がほぐれてきた子、休み時間に笑い声を響かせている子・・・。
ひとりひとりの「がんばり」が、日々の中に静かに、でもしっかりと積み重なっています。

けれどもその一方で、

「なんとなく疲れたな」「まだうまくなじめないな」

という思いを抱えている子も少なくありません。

慣れない環境の中で気を張っていた分、

気持ちがゆるみ始めたこの時期に、ふと不安やさびしさが顔を出すのです。

ある日のことです。朝の会のあと、ひとりの男の子が机に伏せてじっとしていました。


そっと声をかけると、「昨日、友だちとケンカしちゃった…」とぽつり。
まだ関係が浅い友だちとの距離のとり方に悩んだようでした。

彼に、

「そういうこと、あるよね。でも、自分で“どうしよう”って考えてることがすごいよ」

と伝えました。

「すぐに仲直りしようと思わなくてもいい。

でも、相手のことを大切に思う気持ちがあるなら、それはきっと伝わるよ」と話すと、

彼は静かにうなずいてくれました。

次の日、「昨日、ちょっと話せた」と小さな声で報告してくれたのです。

その一歩が、彼の中での大きな成長だったことは言うまでもありません。

また、ある女の子の話です。

新しい係の仕事がなかなかうまくいかず、「わたし向いてないかも」と落ち込んでいる様子がありました。


それでも、毎朝一番に黒板の前に立ち、日直の仕事をていねいにやっている姿を私は見ていました。
だからこそ、声をかけました。

「○○さんが黒板に書いてくれると、字が読みやすいって言ってた子がいたよ。

ちゃんと見てる人がいるんだね」と。

彼女は照れたように笑い、「ほんと?」と目を輝かせました。

こうした場面からもわかるように、子どもたちは日々の中で、

自分なりに考え、迷いながら、それでも一歩一歩、前に進んでいます。

たとえうまくいかないことがあっても、それを「どうしよう」と考えること、

そして行動しようとすることは、立派な成長の証です。

私たち大人にできることは、その小さな「がんばり」に気づき、

そっと寄り添い、「見ていたよ」「よくやっていたね」と伝えることです。

子どもたちは、その言葉を通して、「自分はちゃんと見てもらえている」と安心し、

自分の存在に自信をもつようになります。

そして、その自信こそが、次の挑戦へのエネルギーになるのです。

4月の終わりは、見えない疲れがたまりやすい時期でもあります。

「まだ友だちがうまくできない…」
「失敗しちゃった…」
「自分だけできていない気がする…」
そんな声が、表には出なくても、子どもたちの心の奥にはあるかもしれません。

だからこそ、今、私たちが大切にしたいのは、

「話をきくこと」「気持ちに共感すること」、そして「いいところを見つけて、しっかりと褒めること」です。

誰より早く教室に入ってくる子。

机の上を整えてから帰る子。

友だちにやさしく声をかける子。

何も言わずに、そっと手伝ってくれる子。

どれもが、見逃してしまいそうな小さなことかもしれません。

でも、そうした日々の積み重ねが、子どもたちの「自分らしさ」を形づくり、

「自分はここにいていいんだ」と思える土台になっていくのです。

「がんばってるね」
「えらいね」
「そのやさしさ、すてきだね」
「先生、うれしかったよ」

そんな言葉がけが、子どもたちの心に小さな光を灯します。

それは、自信となり、安心となり、これからの学校生活を支える力となっていきます。

もうすぐ5月を迎えます。
気温も少しずつ上がり、外遊びが楽しい季節になります。

子どもたちの表情も少しずつ晴れてきます。
でも、心の中には、まだゆれ動く気持ちがあるかもしれません。

だからこそ、今、私たちが子どもたちに伝えたいのは、

「大丈夫。ゆっくりでいいよ。」
「あなたはちゃんとがんばってるよ。」
「そのままのあなたでいていいんだよ。」ということです。

これからも、一人ひとりのペースを大切にしながら、

子どもたちの歩みにそっと寄り添っていきたいと思います。
日々の中に見つけた「できたこと」「がんばったこと」に、しっかりと光を当て、

その小さな芽が、やがて大きく育つよう、あたたかく見守ってまいります。